「高熱で寝込んでいる生徒がいるが、保険証が無く病院にかかれないで困っている」と相談をうけ、「無料・低額診療制度」を紹介した、友の会の北田さんに寄稿してもらいました。
定時制高校3年のKさん(17歳・女性)は、父子家庭で兄弟と暮らす
5人家族です。6月、Kさんは、突然の高熱におそわれ学校を休み、アルバイトにも行けず、自宅で布団に入って熱の下がるのをひたすら待つだけの状態でした。
Kさん宅は国民健康保険料の滞納があり、数年前から保険証がありません。家計は長距離トラックの運転手として働くお父さんの給料と、自分たちのアルバイトでやりくりしていますが、諸経費を支払い、食費として使えるのは月2万円程度です。「ご飯と具の入っていないみそ汁だけの食事の時もあった。とても保険料を払う余裕がなかった」とKさんは言いました。
相談を受けた私は、勤医協の「無料・低額診療制度」を紹介し、(勤医協の)診療所で医師の診察を受けることになりました。2回ほどの通院で熱も下がり、1週間ぶりにKさんに笑顔が戻りました。
診療所では、事務長さんに生活相談にものっていただきました。現在Kさんは、元気にアルバイトと勉学に励んでいます。ただ、勤務の関係で月に1-2回程度しか家に帰ってこない父親を「お父さんも、いつ倒れてしまうか心配です」と気遣います。
この事例にふれて、私が15歳の頃のつらく悲しい記憶がよみがえりました。まだ1歳の誕生日を迎えていない妹が、原因不明の病気で、母の胸に抱かれながら亡くなった様子を見ていた記憶です。当時我が家も家計が苦しく、医者に診せるお金が無かったために起きた悲劇でした。
「無保険の子をなくして」の運動を背景に、今年(2009年)4月から中学生以下の子どものいる世帯には国保証を無条件に発行することになりましたが、それでもまだ不十分です。
未成年の子どもが、病気になっても病院にかかれない。これを「自己責任」とでもいうのでしょうか。これは政治の責任ではないかと思うのは、私だけでしょうか。腹立たしさ、強い怒りを覚えます。
今回のことで、「無料・低額診療制度」を持つかけがえのない存在として「勤医協ここにあり」ということを、あらためて実感し、頼もしく心強く思いました。