「夫が待つ家へ帰りたい」−利用者の思いに寄り添い
老人保健施設は、病院退院後、家庭への復帰を目指す中間施設として制度化されました。しかし利用者の多くは特別養護老入ホームへの入居を待つ高齢者で占められ、「第二の特養」化しているのが実態。その現実を打ち破ろうとする試みが北海道勤医協老人保健施設柏ヶ丘で進んでいます。第4回北海道民医連看護介護研究交流集会で発表されました。
夫を探して俳徊
「自宅に戻った時は、それはうれしそうでね。すぐ主婦の感覚に戻って、あれこれ私に指図しましたよ」札幌市の中田さん(86)。自宅居間のソファでウトウトとまどろむ妻の富子さん(85)の肩に、愛おしげに手を置いて話します。富子さんは今年1月まで約2年半、北海道勤医協の老人保健施設柏ヶ丘に入所していました。アルツハイマー型の認知症。パーキンソン様の小刻み歩行で緋徊し、大きな転倒を繰り返しては、駆け寄る職員に「お父さん、来てたでしょ」と問いかけました。俳徊は、夫の姿を探し求めてのことでした。
「富子さんを自宅へ戻せないだろうか」。職員の模索が始まりました。転倒のリスクは大きく、食事も排泄も介助が必要です。心臓が悪い夫を交えて話し合いを重ね、家庭訪問を繰り返しました。試験外泊の都度「大丈夫ですか」と心配して訪ねて来る職員が夫を支えました。
現在は、週4回の通所リハとショートステイなどを利用し、富子さんは自宅で穏やかにくらしています。
「妻の笑顔が励みです。10 カ月間一緒に暮らせて良かった。妻はだんだん弱ってきているが、出来る限り今のくらしを続けたい」
職員も驚く改善
老健柏ヶ丘が利用者の在宅復帰に積極的に取り組むようになったのは2年前、高次脳機能障害の女性Aさん(70代)が、自身も介護が必要な80代の夫が待つ自宅へ復帰を果たしたのがきっかけです。夫は、指輪とネックレスを買って妻を待っていました。職員の誰も、危険認知低下があるAさんに在宅復帰の可能性があるとは思いませんでした。Aさんの強い決意で実現した在宅復帰でしたが、退所後Aさんの日常生活動作は驚くほど改善し、夫との散歩や旅行を楽しむまでになりました。