9月11日に行われた「北海道社会保障学校 in
札幌」で、二宮厚美神戸大学教授が「3・11後の情勢と新たな社会保障を展望する運動」と題して記念講演を行いました。(要約は編集部)
大震災後の新しい情勢の中では、社会保障運動が大きなカギを握っています。
3・11の教訓を生かして、被災地に生存権保障の視点、運動方向を正しく反映することが必要だということをお話します。
財界向けの復興策
被災地域に必要なのは、憲法25条にもとつく復興プランです。しかし、野田首相は、徹底して財界向けのプランを出しています。財界の戦略は、グローバル化の中で強力な国際競争力をつけることです。そのためには、まず消費税率を引き上げ、社会保障との一体改革をすすめることです。
「大企業に税金をかけると安い国に逃げてしまう」「富裕層に税金をかけようとしても、投資家は安い税金の国に金融資産などを移してしまうので、法人税・所得税は増税できない。だから外国に逃げられない人たちに消費税を課し、税収を増やそう」というのが政府の考えです。
2番目は、「福祉国家」的な施策が不可能になったので、地域主権改革で、自治体に社会保障の責任をまかせ、北海道などの広域目治体は大企業のための「もうけの場」になってもらおうという考え方です。
3番目に、TPP(環太平洋戦略経済連携協定)への参加です。「関税などかけるのはおかしい」と、大企業は関税なしの輸出で売り、利益を上げようとします。しかし、逆に海外から大量の安い農産物魚介類が入ってくるので、それに充分耐えられる態勢が必要になります。そこで、企業が農業、漁業に直接進出し大規模な形態ですすめられる条件づくりが必要になります。
被災地である宮城県などでは、すでに農地の所有権や、漁協などの漁業権を取り上げて大企業向けの「復興計画」が進められようとしています。もちろん、農漁民をはじめ徹底的に抵抗しています。被災地には、こうしたグローバル戦略の復興策ではなく、憲法に基つく生存権保障こそが必要です。
生存権保障こそ必要
大震災は人間が生活するための自然的条件と社会的条件を根こそぎ破壊しました。壊さ