その背景とこれから
「生活保護受給者が過去最多に」と報じられる中、2011年11月に道内5ヶ所で行われたSOS
ネットワークによる相談会の会場にも多くの市民が生活・法律・医療など様々な相談に訪れました。その背景について、木下武徳さん(北星学園大学准教授・反貧困ネット北海道事務局長)
に聞きました。
生活保護利用者はなぜ増えた
生活保護利用者が過去最多といわれています。一番少なかったとき(1991
年4月)と比べると、20歳から64歳までのいわゆる「稼働世代」が4万世帯から25万世帯へと約21万世帯増加し、高齢者世帯も23万世帯から63万世帯へと約40万世帯増えています。行政が「働いて生活保護を利用すべきでない」と決めている稼働世帯はこの間に5.
8倍となっており、増加率が高くなっています。
この稼働世帯の増加について、マスコミや一部研究者は、「2008年の『年越し派遣村』で、まだ働ける人にまで生活保護を支給するようにしてしまったからだ」と言っています。しかし、それは、生活保護法が改正されて利用の要件が緩和されたということではありません。生活保護を必要としているのに、「年齢」「住居(住居がないと生活保護を利用できなかった)」などを理由に門前払いされていた人たちが利用できるようになっただけのことです。派遣村のとりくみ等の反貧困の運動によって、隠されてきた貧困が可視化され、不法な生活保護の利用抑制の問題が明らかになりました。また、高齢者世帯で生活保護利用者が増えているのは、「年金額が低すぎる」という社会保険制度の欠陥に原因があります。
日本の貧困率は16%とされています。生活保護が過去最多といっても、まだ世帯比1.6%にすぎませんから、生活保護水準以下の生活を余儀なくされていながら、生活保護を利用していない人がまだ10倍近くと相当数残されているということです。貧困の実態からすると、貧困問題を解決するためには、生活保護の利用は抑制されるべきではなく、逆により利用を促さなければならないということになります。
消費を高め地域経済に貢献
一方で、過去最多になったことをきっかけにまた「生活保護バッシング」報道が増えています。「生活俣護を受けながら、毎日酒を飲んでいる、ギャンブルに走っている」というものです。