9日、北海道社保協の総会記念講演会として、嶋田佳広さん(札幌学院大学准教授)が「国民生活とセーフティネットの動向」と題し、社会問題化している生活保護問題について講演を行いました。その中から、生活保護に対する「よくある疑問」に答えているとこ
ろを抜粋して紹介します(要約は編集部)。
財政を脅かしている?
今春、NHKスペシャルで報道された「生活保護3兆円の衝撃」という特集が本になりました。「働く力があるのに、生活保護に頼っている人が増えている。大問題だ」というのです。
「まえがき」では「生活保護に支払われるのは、一年で3兆3000億円。国の税収、40兆円あまりの12分の1を占める。極めて厳しい財政負担となっている」とありました。
私はそれを見て「3兆円の衝撃」以上の衝撃を受けたのです。なぜか。
日本の政府予算は92兆円です。そのうち社会保障関係は2011年度で28.7兆円で、生活保護費はその中の2.6兆円です。その他に年金や医療の国庫負担分が21兆円。あと福祉関係の予算が4.4兆円です。生活保護費に充てているお金は政府予算全体の2.8%に過ぎないのです。さらにいえば、生活保護費のうち半分は医療扶助(医療費分)です。医療扶助というのは、本人の懐には入りません。そして残りの半分が、生活扶助と住宅扶助(家賃分)です。住宅扶助も本人には入りません。結局本人の生活に回るお金は9000億円くらいです。
本当の意味での最低生活保障、日々のご飯を食べたり、服を買ったりすることに支払われている生活保護費というのは、まだ1兆円足らずなのです。ですから、「生活保護が増え続けたら日本は破綻する」などということはあり得ませんし、「生活保護費が国家予算を圧迫している」というのはあたっていません。
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