「反貧困ネット北海道」設立3周年記念シンポジウム(7月7日)より
「家族主義」への反論 分断される国民反貧困ネットワーク事務局長 湯浅誠さん
7日、「貧困ネット北海道」設立3周年記念シンポジウムが札幌市内で行われました。市民約200人が参加するなか、湯浅誠さん(反貧困ネットワーク事務局長)、山ロニ郎さん(北海道大学教授)が講演・シンポジストとして発言しました。その中から、生活保護に関する湯浅さんの発言を紹介します。(要約は編集部)
「家族の自助」は当たり前なのか 芸能人の母親が生活保護を受けていたことが話題になりました。もともと話題になる以前から自民党の政策ビジョンの中に、家族の自助によって負担をするという「家族主義」があり、そこにこの話題が週刊誌でとりあげられたのをみて、「家族による自助」を強調するネタにできると読んだのです。それに多くの人が賛同して、生活保護バッシングへとなりました。
「家族主義」に日本人は弱いですよね。「家族で支えるのは当たり前でしょう」と言われて、「そうじゃない」と言う人は、あまりいません。しかし、家族主義のほかの選択肢はあります。例えば、話題の方のような高額所得者の税金をひき上げて、そのお金でお母さんを養うといった、公的な税と財政を通じた分配の仕方というのはあるわけです。けれども、多くの人はそうは思わない。「子どもが稼いだら、まず親の面倒をみろ」というのが日本人の一般的な感覚です。世界の先進国からみれば特殊なことですが、日本人はそう思わない。介護保険があっても使わずに、家族で介護をしています。「よそ者が家に入ってくるのは嫌だ」とおじいちゃんが言うので、お嫁さんが介護しているという家庭はたくさんあります。
「家族主義」にどうやったら反論できるかということですけれど、私は「公的支援をしたほうが家族を守れます」と言っています。家族での支援がどうにもならなくなり、共倒れしかけ、家族関係がこじれて憎しみあっている家族は、一旦切り離したほうが、数年後に仲良くなれます。
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