所長あいさつ (50周年記念誌より)
2021-11-26
お知らせ勤医協小樽診療所は2021年7月で開院50年を迎えます。この地で半世紀にわたり医療活動を続けてこられたのは、地域の患者さん、社員・友の会員、医療介護関係者の皆さんのご支援とご協力の賜物でございます。この場をお借りして心からのお礼を申し上げます。ありがとうございました。
40周年からの10年間、私たちは「いつまでも住み続けられる街づくり」を目指して取り組みを継続してきました。2010年の塩谷地区を皮切りに、オタモイ地区、幸地区、長橋地区などを重点に小樽全域で、毎年住民アンケート調査を実施し、昨年はコロナ禍での不安、不自由さの調査を電話アンケートで実施しました。
友の会員との共同行動で地域住民と顔を合わせ、生の声を聴くことによって地域の要求が明らかになってきます。除雪対策、医療介護関連の支出負担増、住宅問題、一人ぼっちの孤独、老後の生活や健康の不安などがある一方で、地元に住み続けたい思いの強さも感じることができました。このアンケートの要求実現のため、対市交渉や市議会での質問に取り上げてもらい、安心カード配布要求では市の広報誌に大きく取り上げられました。
孤立する高齢者の憩いの場、仲間づくりの場としての「居場所」づくり運動の結果、くつろぎ食堂「ぽぽろ」の開設として結実することができました。この活動は評価され大和証券の表彰を受けました。
小林多喜二が活動していた戦前の暗黒時代に、私たちの源流である「無産者診療所」が弾圧に抗して「病気は生活と労働の場から診る」という先駆的な医療観を大切にしながら医療活動をつづけました。その疾病観は戦後の私たち民医連の運動に受け継がれています。
現在、新自由主義が世界中に広がる中、病気は自己責任だと強調されるようになっています。その流れに抗してWHOを中心とした世界の研究者が取り組んできた成果が「健康の社会的決定要因(SDH)」の確認であり、多くの国で政策に反映されつつあります。
我々も貧困・格差の拡大、社会保障制度の後退、高齢化の進行の中で、来院する患者さんの病気だけではなく、患者さんを取り巻く社会的背景、家庭環境、メンタル問題、社会的支援などをとらえる努力を続けております。日常診療の場での問診のとり方の工夫、問題があれば積極的に地域・家庭訪問に出向き、それを多職種、在宅関係者、時には行政関係者とのカンフアレンスで検討し、可能な限り患者さんが安心してこの地に住み、療養を継続出来るよう取り組みを進めております。
これからの半世紀も原点を忘れずに、私をはじめ全職員が次の世代にバトンを引き継ぎながら邁進してまいります。これからも宜しくお願いいたします。
中井 秀紀(勤医協小樽診療所 所長)