2025-11-11
このたび、北海道新聞において「北海道勤労者医療協会で職員の退職が相次いでいる」との報道がなされました。記事の内容により、ご心配やご不安をおかけしている地域のみなさま、関係者のみなさまに、心よりお詫び申し上げます。
報道にありました「200人を超える退職者」という数字は、私たちの法人でこの一年間に退職された職員の実数に近いものです。しかしながら、報道にある「昨年末に職員の一時金を大幅に減額しており、待遇への不満と人手不足による職員の負担増」がすべての要因ではなく、例年の退職者数と比較して極端に多いわけではありません。北海道勤医協は経営方針に基づいた新卒・中途職員の採用を計画的に行い、経営規模に対する人員配置の適正化を進めており、病院・診療所とも通常どおり診療をしています。
北海道勤医協もまた、他の医療機関と同様に経営は厳しい状況におかれています。事業継続していても利益改善の見通しが立たない事業所や診療科につきましては苦渋の決断で再編を行い、医療構造の転換を進め、法人の経営改善に務めている途上です。この成果もあり経営水準は大幅に改善しており、今年度は年末一時金についても2年前と同水準まで回復しています。
北海道勤医協は、救急・急性期医療から回復期医療、診療所を中心とした地域医療や家庭医療など、北海道の医療を守り継続することを最優先に努力を重ねております。
医療機関を取り巻く全国的な困難
今回のような報道が生まれる背景には、北海道勤医協だけでなく全国の医療・介護現場に共通する深刻な構造的課題があります。
診療報酬は物価や人件費の上昇に十分に対応しておらず、医療機関の経営を圧迫しています。この状況は、医療従事者の処遇や人員確保にも影響を及ぼし、地域医療全体を危機にさらしています。私たちは、こうした現状を「一法人の経営問題」としてではなく、国民のいのちと健康を支える社会保障の課題として正しく伝えていく責任があると考えています。
北海道勤医協は、全日本民主医療機関連合会(民医連)の一員として、全国の仲間とともに、医療・介護崩壊を食い止めるための緊急行動に取り組んでいます。診療報酬の引き上げや医療機関への公的支援を求める署名活動にも力を注いでいます。
地域のみなさまとともに
私たちは創立以来、地域に根ざした「無差別・平等の医療」を理念として歩んできました。
経営の厳しさの中でも、地域のいのちと健康を守るという使命は決して揺らぎません。職員一人ひとりが安心して働ける環境を整え、地域のみなさまと手を携えて、持続可能な医療・介護体制を築いていきます。
また、「いのちの平等」を掲げる理念にもとづき、北海道勤医協の全事業所では無料低額診療事業を実施しています。今年度はすでに半年間で1,700件を超える相談・利用があり、誰もが安心して医療を受けられる地域づくりを進めています。
今後も、事実に基づく正確な情報発信に努め、地域のみなさまの信頼に応えるために全力を尽くします。ご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。
2025年11月10日
公益社団法人 北海道勤労者医療協会
理事長 小市 健一