住居なく車中泊で痛みに耐えた 肺がんで受診2カ月後に死亡

2024-03-31 ニュース

手遅れ死亡事例2023


妻と子どもと暮らしていた岡田和郎さん(66歳・仮名)は糖尿病があり、近くの病院に定期受診していましたが 2021年頃から通院を中断(理由は不明)。
2022年に離婚し、家を出て車の中で生活をしていました。
個人事業主として警備員をしていた岡田さんは、警備会社から仕事を委託されていましたが、2023年1月頃から具合が悪くなり、仕事を休んで貯金を切り山朋しながら暮らしました。
2023年5月、呼吸苦が我慢できなくなり、近くの病院を受診。肺膿瘍、肺癌の疑いがあり、詳しく検査するため勤医協中央病院に転院しました。岡田さんから「お金が心配と聞いた病棟の看護師が医療福祉課に連絡し、ソーシヤルワーカーが対応しました。
すでに預金も底をつき、財布には5千円しか残っていません。離婚後は車の中で寝泊まりをしていたため
居住の実態もありません。限度額適用認定証を確認しましたが、確定申告をしていなかつたため所得区分「ア」(上位所得者・負担限度額月14万円)とされてしまいます。岡田さんが働いていた警備会社にも相談しましたが、所得区分は変わりませんでした。ソーシャルワーカーは生活保護課に通報し、生保申請しました。
検査の結果、原発性肺腺癌のステージ4と診断されました。治療が難しい状態であることを医師が岡田さんに告げると、住まいのある地域での緩和治療を希望しました。すぐに紹介元の病院へ転院して療養を継続し、生活保護も決定しました。しかし残念ながら、2力月後に息を引き取り、区役所が行旅死亡人として対応しました。
苦しくても受診につながらなかった原因についてソーシャルワーカーは、「無料低額診療や生活保護制度を岡田さんは知らず、年金の手続きもしていませんでした。離婚したことで家族の協力が得られなくなり、仕事も生活も安定せずに車で寝泊まりしているうちに、生きる気力がなくなっていったのかもしれません」といいます。
そして、「こうした事例をなくすためには家族や地域とのつながりが必要ですが、車中泊をして他人とのつながりを断っている人をどうしたら救えるのか、本当に難しい。無低や生保を多くの人に周知して、できるだけ孤立させないように日頃から地域の人が信頼関係をつくっていくことが大事だと思います」と話します。