末期がんでもネコを心配する67歳男性

2024-04-27 ニュース

手遅れ死亡事例2023


本州で古物商をしていた加藤将さん(67歳.仮名)は、63歳のときに早期退職して札幌市に移住。趣味で古いコインや切手を収集しながら3匹のネコたちといつしよに暮らしていました。年金は月9万円ほどで、買い物以外は外出せず、近所付き合いもありません。
道内に姉がいますが、疎遠になり20年以上連絡をとっていません。
加藤さんは6年前の健診で貧血を指摘されましたが、その後受診していませんでした。2年前から腹部の痛みや不快感を自覚し、1力月前から動くと息切れするようになり、ゴミ捨ても大変になりました。

昨年11月、ついに動けなくなり、救急車を呼んで勤医協中央病院に運ばれ、そのまま入院しました。
ソーシヤルワーカーが対応し、事情を聞きました。加藤さんは70万円ほど貯蓄がありましたが、ネコの去勢費用などにあてるため受診をしなかったといいます。「自分が入院してしまってネコたちに申し訳ない。どうかエサだけでも与えてほしい。世話をしてほしい」と、ネコの心配はかりしています。


ソーシャルワーカーはペツトの引き取りや譲渡会をおこなっている動物愛護管理センターに連絡し、ネコを保護してほしいと相談しました。しかし、「保護は可能だが、ネコをセンターに連れてきてほしい」と言われます。職員が加藤さんの自宅に行ってネコを捕獲するわけにもいかず、業者に依頼しました。
その間に加藤さんの検査をおこない、胃がん末期、多発性肝腫瘍と診断されました。全身の状態が悪く、すでに治療が難しい状態でした。加藤さんはその翌日に急変し、そのまま息をひきとりました。身寄りがいないため役所へ連絡し、行旅死亡人として取り扱われました。

ソーシャルワーカーは、「無料低額診療を知っていれば、もっと早く受診につながっていたかもしれません。受診すれば入院になることは加藤さんも感じていたと思います。ペットが心配で受診できなかったのかもしれません。ネコといつしょに入院できる施設があればいいのですが、衛生面の問題もあってなかなか難しいと思います」と話します。
業者は加藤さん宅の片付けなどを含め、3人がかりで数時間かけてネコを捕獲。費用は十数万円かかり、
加藤さんの貯金から支払いました。ネコは無事に動物愛護管理センターに預けることができました。