手遅れ死亡事例2023
佐久間明さん-(41歳・仮名)は仕出し屋で働いていましたが、3年前に職を失い、年金で暮らしている父親を頼って同居しました。
それからは家にこもり、買い物以外はほとんど外出しませんでした。佐久間さんは1年ほど前から体力の低下を感じ、息苦しさを感じてきました。しかし、お金がなく国保に加入していなかったので、病院に行くことをためらっていました。父親は体調が悪化する息子の様子が気になりましたが、歩くことも難しく、精神疾患もあるため支えることができませんでした。
しかし、昨年4月に動けなくなり、父親が救急車を呼んで勤医協中央病院に救急搬送されました。体力のない父親は区役所との交渉が難しく、医療費の問題を解決できません。ソーシャルワーカーが委任を受けて国保加入手続きを支援しました。
区役所担当課と粘り強く交渉し、国保料の未納分の一部を納めることで国保に加入でき、限度額認定証もなんとか発行されました。
佐久間さんは結核と診断され、隔離病棟のある病院への転院を検討していましたが、残念ながら搬送された4日後に亡くなりました。父親も結核に感染していることがわかり、治療を受けています。父親は、「自分の命はともかく息子だけは助けたかった。もっと早く受診させていれば…」と悔やんでいます。疎遠だったた東京の親戚がその後の対応をしています。
担当したソーシャルワーカーは、「無保険の方が病院に運ばれてから国保に加入させることは、非常に難しいのです」と話します。行政は、「国保料を納めている人との公平性」を理由にしています。しかし、「誰もが医療を受けられることを優先してほしい。倒れてからもスムーズに国保に入って保険で治療できるしくみが必要です。そもそも国保料が高すぎて払えない人が多いので、保険料の大幅な引き下げが必要です」と指摘します。
また、引きこもりの方への対応について「街頭での相談会などで引きこもりの方をもつ家族から相談を受けることがよくあります。行政や地域包括センターといった相談窓口も利用してもらい、徐々に社会との接占を持つように働きかけることができると思います。友の会や私たちのアウトリーチの活動も重要です」と話します。